2016/01/09

演奏に没頭する



 今回のテーマは“演奏に没頭する”ことの大切さについて。
 
 換言すれば、それはあらゆる雑念や阻害要因に影響されることなく、プレーヤーに“なり切る”ことの重要性。ウマいヘタとは無関係に、楽器を構えて演奏する以上は、いついかなる時にも、絶対に忘れてはならないことです。

 たとえばボウイングを間違えたとか、音程をハズしたとか、指がもつれてトチッたとか。大なり小なりこういった“事故”は往々にしてありえる事です。ただ、それらはすべて弾き手側の個人的な都合上の出来事でしかなく、それとはまったく無関係に場面は進み、音楽は流れていきます。いや、流れを止めることがあってはならない。なぜなら、聴き手は音楽を聴いているのであり、弾き手の細々としたトラブルに気を留めていちいち立ち止まりたいはずがないからです。
 
 仮に弾き手が何らかの事故を引き起こしてしまった場合、その時点でまず聴き手の期待を裏切ることになります。挽回するすべはありません。なぜならそれは起こってしまった出来事であり、音楽は流れ続けて巻き戻すことはないからです。にもかかわらず弾き手が自らが引き起こした事故にとらわれて集中を欠いて引きずってしまったとすれば、それは聴き手に対する“二重の裏切り”でしかありません。
 
 たとえ事故が起こっても即座にそれを受け流し、ただひたすら演奏に、音楽だけに没頭し続けること。それこそが、聴き手に対する唯一無二の挽回策であり、礼儀なのです。
 
 照れ隠しとか弁明じみた所作を試みたところで、何の意味もありません。裏切る回数は一度きりで十分。音楽への集中を欠くような自己弁護や照れ隠しは絶対にしてはいけません。それは単に最低最悪の行為でしかないことを、重々理解した上で舞台に上がりましょう。

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